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第1105話

Author: 宮サトリ
人のいない廊下まで歩いてきたところで、瑛介はようやく足を止めた。

弥生は首を傾げて彼を見上げた。

「どうしてみんなに、私たちの関係を言っちゃったの?」

その言葉に、彼が一瞬だけ止まった。

腰に添えられていた手の力がゆるみ、彼はゆっくりと顔を傾けた。

「言っちゃいけない理由はがあるのか?」

低く静かな声。

そして次の瞬間、彼は一歩近づき、身をかがめて弥生の顔のすぐ近くに唇を寄せた。

声にはわずかに棘を含んだ甘さが混じていた。

「どうした?僕と一緒だって知られるのが嫌なのか?それとも、僕の名前を出すのが恥ずかしい?」

「それとも、会社で気になった人でもいるのか?」

弥生は思わず口をぽかんと開けた。

ただ理由を聞きたかっただけなのに、この人の想像力はどうしてこうも豊かなんだろう。

男の人って、意外とこういう時こそ考えすぎる生き物らしい。

彼女は呆れたように瞬きをして、軽く笑った。

「記憶がないんだから、仮に私が釣りしてたとしても、今の私は知らないわね?」

その言葉が冗談だとわかっていながらも、瑛介の胸の奥には、小さな嫉妬の棘がちくりと刺さった。

彼は唇を引き結び、低く応じた。

「いいさ。もしそうであれば、その人はきっと現れる」

「へえ?それは逆に楽しみだね」

弥生は挑発するように眉を上げた。

「でも、人のことばかり言うけど、あなたの会社は?私のところよりずっと大きいでしょ。相手を探すなんて、あなたの方がよっぽど簡単なんじゃない?」

まさか反撃されるとは思わなかった。

確かに彼の会社は巨大だ。つまり、恋愛相手を探すのがずっと簡単だ。

言い返せずに口を閉じると、弥生がくすっと笑った。

その笑みを見た瞬間、先ほどまで胸の奥にあった酸っぱさが、不思議とやわらいだ。

彼女が自分の会社の話を出したということは、ちゃんと自分のことを意識してくれている、ということだ。

そう気づくと、彼はすぐに気持ちを切り替え、わざと軽い調子で言った。

「そんなに気になるなら、ノートパソコン持ってうちの会社で仕事すればいい。どう?」

「え?それっていいの?あなたの仕事の邪魔にならない?」

瑛介の声が低く落ちた。

「何の邪魔?」

「恋愛相手を探すの、邪魔になっちゃうでしょ?」

その瞬間、彼の腕に力が強くなった。

腰を抱く手がぐっと締まり、瞳
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